双極性障害患者の1症例

双極性障害とは?
双極性障害は、気分が高揚し、活動的な「躁状態」と憂うつで無気力なうつ状態「うつ状態」が繰り返される精神疾患であり、一般的には「躁うつ病」と呼ばれることもある。
双極性障害のはっきりとした原因は不明だが、脳内の“神経伝達物質”のバランスが崩れることが関係しており、遺伝や生活習慣・ストレスなどの環境も関わっていると言われている。

症例
40歳代、男性
性格的特性:何にでものめり込みやすく一つのことに没頭しやすい。寝食を忘れるほどやってしまう。

現病歴:元々は溶接工をしていた。仕事に没頭すると眠らなくても、休日でも作業をすることができたが、それで体調を壊した。カウンセラーには「仕事中毒になってます」と言われた。27歳のころに双極性障害と診断。服薬治療等開始。

仕事歴:服薬治療開始後はスーパーマーケットで仕事をしていたが、病状が安定しないため辞めた。現在は福祉系の軽作業を半日ほど行っている。

躁・うつの期間:1年でみると、10月~3月がうつ状態で、4月~9月が躁状態であるが、小さな波でみると、うつ状態が2か月~2か月半。躁状態が1か月のスパンで繰り返している。

症状:症状はうつ状態の時期に出てくる。頭がぼーっとする。気分が乗らない。イライラすることがある。無意識に力が入るので、全身の筋肉や関節が重苦しい・こわばる。首肩こり。腰痛。

体表所見
●頭のむくみ:百会を中心に直径10cmほどのむくみ+→横刺で入れると「気持ちが良い」と。これは慢性的な寝不足などの患者さんにも多発する所見でもある。
●頚部全体のむくみ:頚部の筋緊張という感じではなく、ぼわったしたむくみと筋の隆起による凹凸の消失。触れると冷たい。

治療
施術頻度・回数:1回/週のペースで来院。
治療穴:陰谷、陰陵泉、三陰交、中封、太白、太衝、太谿、少海、曲池、郄門、翳風、の中で反応のあったツボを適宜選択し、置鍼(15分)。百会-神庭の鍼通電100Hz、15分。
天柱、風門、肺兪、厥陰兪、心兪、督兪、膈兪、肩外兪などの頚肩背部の反応のあったツボに置鍼。
風池-大杼、完骨-肩中兪に鍼通電2Hz、15分。

経過
施術2回目:施術後は10年ぶりに熟睡できた。“頭の中の霧”がスーッと無くなった。腰痛、肩こり↓
施術3回目:鍼をすると1週間ほど調子が良い。
施術4回目:調子が良いのが2週間は続くようになっている。
施術6回目:首や肩は以前よりすっきりしている。調子が良い。
施術7回目:調子が良い。一旦、治療終了。

考察
患者さんは、今回の症状である頭がぼーっとする、気分が乗らない状態を「頭の中の霧」と表現した。これが、鍼をすることで徐々に無くなっていったのだが、鍼をすることで血流が促進され、脳の働きが活性化されたと考えられる。頭や頚部のむくみは施術を重ねるごとに緩解してきたが、頭や頸部のむくみは頭部への血流不全のサインだと考えられる。
双極性障害の治療のメインは薬物療法であるが、鍼治療はその補助療法として取り入れても良いと考えられる。


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