腰痛・下肢・足の症状

ぎっくり腰
効果
代替性
鍼の響き
総評

ぎっくり腰(急性腰痛)になった人に、「少し前より疲労がたまっていませんでしたか?」と尋ねるとほとんどの人が「はい、そうでした」と答えます。つまり、ギックリ腰は腰痛という形で疲労が噴出したものと考えて下さい。これが、首に来れば寝違えになります。

効果:腰痛診療ガイドライン2012(日本整形外科学会・日本腰痛学会監修、日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・腰痛診療ガイドライン策定委員会編集)のClinical Question15の「腰痛に代替医療は有効か」では鍼治療はグレードB(行うよう推奨する)でしたが、腰痛診療ガイドライン2019では、鍼は腰痛に対して”推奨しない”と記載されています。

これに対して、森ノ宮医療大学の山下教授を中心とするチームはそのガイドラインを検証し、内容についての文献選択、データ抽出、データ入力などに間違いがあり、逆の結果を示す深刻な誤りを含む多くの誤情報を発見し、全日本鍼灸学会で発表しています。

森ノ宮医療大学 鍼灸情報センター
腰痛診療ガイドライン2019の鍼治療に関する誤情報
J-STAGE

このようなことが鍼灸や鍼灸師を貶めるために、医師の診療の指針となるガイドラインで作為的に行われていたとは信じたくありませんが、あまりにも偶発的とは考えにくいことが起きていることは事実であり、そのことを国民は知らなければならないと感じています。

さて、話を戻すと・・・・鍼は腰痛に良く効きます。ぎっくり腰を年に3回も4回も繰り返すようならば、それは腰部の芯のコリが取れていないので当院のような深部の筋肉を治療できるところでコリをほぐしてもらう方が良いです。

代替性:整体やカイロプラクティックでも良くなるケースもありますが、施術者の技量に左右されます。服薬や湿布をしていてもある程度、休養・安静にしていれば徐々に良くなるものでもありますが、繰り返すようならば再考した方が良いでしょう。

鍼の響き:鍼は体格にもよるが、5番~10番くらいものを中心に用いるので、ズーンとした刺激感はありますが、ぎっくり腰自体の痛みが辛いので、鍼の痛みは我慢できるというものです。比較的太い鍼で施術しますので、1日くらいは患部は重苦しいですが、その後はすっきりするはずです。

総評:今回の痛みを取るためだけならば、治療回数は1~3回で終了することが多いです。1,2回で動けなかった人が動けるようになるので、忙しい人でも鍼を受ける価値はあります。技量にもよりますが、整体やブロック注射でも良くなることがあるので、整体のボキッってのと、注射のブスッてのと、鍼のズーンの内でご自身が良いと思ったものを選べばよいのではないでしょうか?

ただ、疲労が原因なので、仕事量、ストレス、食事、睡眠、運動などを一度見直しましょう。生活改善が難しい場合は鍼灸や整体などで1回/月の定期的なメンテナンスをすることで回避できます。

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慢性腰痛
効果
代替性
鍼の響き
総評

腰痛診療ガイドライン2019では慢性腰痛は”3か月以上痛みが持続していること”と定義しています。常に重量物を持っている人や介護で人を抱きかかえている人、中腰の姿勢が多い人は急性腰痛→慢性腰痛になりやすく、立ち仕事、座り仕事、夜勤の人が多い、寒冷環境などでの仕事の人も注意が必要です。

普段、重量物など持たないタイプの慢性腰痛は循環障害が原因なので、ストレス、睡眠、姿勢、運動生活習慣の改善で良くなることも多いのですが、腰に常に負担がかかり酷使している人は深部の筋肉のコリを長針でほぐしてからでなければ良くならない可能性があります。良くなった後は適度な運動やストレッチや仕事で痛くならない工夫をすることが治療よりも重要でしょう。
また、慢性腰痛に関して昨今の医療界では”社会心理的要因”、つまり”精神的ストレス”が治りにくい要因の一つになっていると言われております。このストレスが脳に作用して、痛みを抑える機能を減退させたり、痛みに過敏にさせているということです。したがって、ストレスをためない、ストレスを解消する手段を実行することで、痛みを軽くすることが出来ます。

効果:2021に発行された慢性疼痛診療ガイドラインではH.統合医療のCQH-1:鍼灸治療は慢性疼痛に有効か?に対して推奨度:2(弱)施行することを弱く推奨する(提案する)、エビデンス総体の総括:C(低い)であった。慢性疼痛に対して鍼灸は有用であると考えるが効果・コスト、患者の価値観などを考慮したうえで優先させるべきだとしています。さらに、慢性疼痛に関する知識を有する鍼灸師を選択しなさいとしています。

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ガイドラン的には弱い推奨でありますが、慢性腰痛には鍼は効きます。ただ、本当に良くしたいなら週1回で10~20回くらい(2~6か月くらい)必要です。

代替性:整体やカイロプラクティック、鍼灸など効きますが、治す気なら少し気長に通う必要があると思います。ただ2、3回の施術で全く変化がみられないようでしたが、そこでは治らないと考えた方がいいです。逆に治療している立場としては、2、3回は猶予が欲しいところです。たまに1回施術を受けて、効果が悪いと別の治療院にすぐ変える患者さんがいますが、そんな人は今後も慢性腰痛は良くなりません。はっきり言って施術する側からしたら、不快です。

慢性になると、腰・臀部、股関節回り筋肉の石のように凝り固まっている場合があるので、それをほぐすのには鍼以外は無いのではないでしょうか?このコリを柔らかくしないとストレッチをしても柔らかくなりません。

鍼の響き:腰の深部のコリにあたると少しズーンときますが、我慢できないほどではないです。

総評:慢性腰痛で来院する患者さんは普段はちょこちょこ痛いけど、低空飛行を続けていたが何かのきっかけで痛みが強くなったので「どうにかしてくれー」という方(低空飛行型)と一般生活まで影響を及ぼして、仕事もままならず、辞めてしまうくらいの人(深刻レベル)だと思います。また、様々な療法を一通り試している人も多いと思います。

当院ではこのような方の痛みを0にする(になる)ということを想定してはいません。普通の生活は問題ないが、時々無理すると痛くなる程度にするのが施術の目的で、残り数%はセルフケア、生活改善で何とか出来ると思います。

痛くてたまらない状態から解放されるのですから、受けてみても良いのではないでしょうか?また、あまり自分で気を付けるのは得意ではない方は定期的に治療を受けて体の歪みを取るのも良いかと思います。

因みに常に痛みのことを考えていたり、もう痛みが良くならないんだと考えていたり、痛みに敏感で過大に考えているなどマイナス思考の人は腰痛が良くならないと言われています。これは脳と自律神経と痛みの神経の関係ですが、最近良く言われていることです。したがって、どうぞ根拠のないものでも良いので前向きに物事を考えるようにして下さい。

最近では慢性的な腰痛に様々な薬も出ていますが、私個人は賛成できませんので、おすすめしません。まずは、生活習慣や姿勢、仕事内容、ストレスなどを改善することから始めてみてはどでしょうか?

下肢の痛み・しびれ・重苦しさ(坐骨神経痛など)
効果
代替性
鍼の響き
総評

当院に来院される下肢痛の患者さんを診ていると7割は腰由来の神経痛で、2割は仙腸関節由来で、0.5割は殿筋由来で、もう0.5割は原因不明です。

治療期間も腰痛よりもかかる場合も多く、少し良くなったからといって無理をするとぶり返すので、職場の上司や管理職にはそのへんを理解してもらって職場復帰してもらいたいところです。

医療機関で検査しますと、画像の状況によって椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などと診断されるようです。診断名がついたからといって、鍼灸で治らないことはありませんが、次のことを注意してください。

【腰部椎間板ヘルニア】
ヘルニアと診断されても、多くは保存治療で一部のみが手術を要します。したがって、鍼灸治療も多くに適用とされますが、じっとしていても下肢にビリビリヒリヒリするような激しい電撃感・灼熱感が伴うようなものは神経根部に炎症が起きていますので効きにくいor全く効きません。腰部椎間板ヘルニアと医師に言われても、激しい痛みが無いものには鍼は効きますが、腰痛よりは時間がかかります。これは、ヘルニアそのものというより、大腰筋や腸骨筋のコリが由来するトリガーポイントの痛みではないかと考えています。

【脊柱管狭窄症】
脊柱管狭窄症は脊柱管の退行変成によって神経を圧迫する病気で、70歳以上で診断されることが多いです。治療はほとんどが保存治療で、手術をしてもすっかり良くなることは無いようです。年配の方の脊柱管狭窄症は脊柱の骨の変形がベースにあるため、鍼灸治療は不適であることが多いです。特に両側の下肢にしびれや灼熱感(ヒリヒリチクチク)が出ているものに関しては治らないことが多いです。まれに脊柱管狭窄症と診断されても、片側の下肢に主に痛みがメインの場合は改善がみられますが、あまり著効を示さないことが多いです。鍼が著効した場合は、脊柱管狭窄症が誤診(症状を起こしているものが脊柱管狭窄症ではなかった)されている場合だと考えられます。

【仙腸関節性腰痛】
当院で最も得意としている腰痛の一つです。骨盤の仙腸関節というところが、急激もしくは持続的な負荷によりずれてしまったためにおこる腰痛です。腰の下の仙骨部の痛みや臀部や鼠径部、大腿部、ふくらはぎなどにも痛みを引き起こしますので、椎間板ヘルニアなどと思いがちですが、痛む場所がちょっと違います。また、動作時痛の他にも、座っていたり、仰向けでいると仙骨部が圧迫されて仙骨部や下肢が痛苦しくなります。炎症による痛みではないため、他の腰痛のように安静にしていても良くなりません。2,3か月もこの状態が続くようだと、仙腸関節性腰痛が疑われます。

【腰部・臀部・骨盤帯・大腿部の筋肉のトリガーポイント】
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と診断されて、鍼灸で症状が緩解したもののほとんどはこれだと考えています。該当筋に鍼先が当たると症状が再現されます。

効果:強烈な電撃感覚・灼熱感覚が無いもの、明らかな退行性骨変形による圧迫がないものには鍼が効きます。また、心療内科系の薬やステロイドなどを服用していたり、ブロック注射を多用していると鍼は効きにくい傾向がありますが、じっくり治療を受けられるならば徐々に効いてきて良くなります。

代替性:前述した通り、筋肉のコリによるものが多いので、鍼をしっかり打ってもらうのが良いとと考えています。整形外科やペインクリニックのブロック注射やカイロプラクティックや整体等の効果は、どの程度かは良く分かりません。ちなみに浅層筋の電気治療やけん引治療、ウォーターベッドでは治りません。

鍼の響き:深部の筋肉をターゲットにするため、長く太い鍼(3寸、4寸の5~15番)を用いるのでまずまず響きます。

総評:何も言われなかったもの(坐骨神経痛含む)や慢性的な腰部椎間板ヘルニアあたりまでは鍼が良いかもしれません。それは筋肉のコリやそれに伴う血流不全が鍼によって改善するからです。何回も言いますが、脊柱管狭窄症になると老化による構造物の変性がベースとなるため治療コスパが悪く、治療を中断するとまた痛くなることも多いのであまりお勧めいたしません。

股関節痛
効果
代替性
鍼の響き
総評

急な歩きすぎや運動で痛みがでます。股関節の外転制限が生じます。元々を考えると先天性の股関節脱臼や臼蓋不全などがあることも多いです。本人も自覚していないこともありますが、胡坐がかきずらかったりする人はその可能性があります。
若いころは、問題ないのですが加齢とともに50歳代以降より徐々に痛みが生じてくることが多いようです。股関節を作る大腿骨と寛骨がぶつかって、変形したものを「変形性股関節症」と言います。診断されてもすぐに手術ということはありませんが、手術によって、かなり生活の質も改善されることも多いので選択肢の一つだと思います。

効果:小・中殿筋のコリや姿勢や疲労による仙腸関節のずれによる股関節周辺の痛みであれば鍼が効きます。先天性股関節脱臼や臼蓋不全と診断され、下肢長の左右差が出ていたりすると遅かれ早かれ股関節の手術も念頭に置きつつ治療することになるでしょう。この場合、鍼治療すると一時的に楽になりますが、過度な歩行など無理すると痛みが出ることがあります。セルフケアとしてスクワットなどで殿筋のストレッチ・強化は必須です。

代替性:先天性股関節脱臼など股関節に問題がある場合は整体などでも難しいのではないでしょうか。小・中殿筋という深部の筋肉に鍼をしますが、これを手技でうまくとれるならば鍼以外でも可能性があります。

鍼の響き:そんなに長い鍼を行いますので、多少響きます。

総評:鍼灸の適応は、初期から中期と考えております。

膝痛
効果
代替性
鍼の響き
総評

効果:病院で変形性膝関節症と言われるものでも鍼が効くことが多いです。それはほとんどが膝周囲の筋肉などの軟部組織が硬くなったために起きているからです。

鍼や灸で大腿の伸筋群、ハムストリングス、内転筋群や膝蓋下脂肪体(IPF)を柔らかくして、膝関節屈伸運動や膝蓋骨周囲のマッサージやストレッチをしていれば膝が伸びて、膝の後ろや内側が痛くなったり、腫れて水がたまったりしなくなります。だいたい、1~2回/週の治療で1か月かかります。

例外なのは膝関節内部の半月板や靭帯が壊れていたり、膝関節が高度に変形していたり、軟骨や骨がかなりすり減っていたり、リウマチで痛みが出ているものは治りません。

代替性:湿布は痛み止めなので貼っているうちは少しは楽です。コンドロイチンなどのサプリメントは効かないと思います。整体やマッサージでも良くなるかもしれませんが、時間がかかります。

鍼の響き:大腿前面への鍼は少し痛いかもしれません。

総評:鍼灸の適応は、初期から中期と考えております。普通に歩行ができ、正座ができるようになることが目標です。また、膝の屈伸リハビリ(大腿四頭筋訓練)が欠かせません。