PMS(月経前症候群)には仙腸関節刺鍼が有効です。

月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)
生理3~10日位前に始まるさまざまな精神的・身体的な不調のことを言います。原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の急激な変動が要因だと考えられています。
女性ホルモンのバランスは睡眠、疲労、食生活、ストレスなど様々な影響を受けるため、PMSは多くの要因が絡んでいることに注目しなければなりません。

精神神経症状
情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害など
精神状態が強いものは月経前不快気分障害(premenstrual dyspholic disorder : PMDD)の場合もあり、心療内科の受診が望まれる場合がある。

自律神経症状
のぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがありますが、この他にもどんな症状も出る可能性があります。

PMSの症状になりやすい性格
これはPMSだけではなく、自律神経疾患、心療内科疾患にもいえます。
“テキトー人間”は病気になりにくい傾向があります。
 ・何事も我慢しやすい
 ・生真面目
 ・こだわりが強い
 ・完璧主義者
 ・負けず嫌い
 ・自分を責めやすい

PMSに対する鍼灸治療
鍼灸治療を行うと、次回の生理の時に症状が改善することが多いです。ただ、施術を中止すると徐々に症状が出てきます。とはいっても、生理前に1回/月ほど治療を受けていれば症状が出ないならばそれはそれでベターな方法かもしれない。服薬もいらなくなるので、選択肢の一つとして考えても良いと思います。この場合の治療は仙腸関節刺鍼を行います。左右の仙腸関節に鍼をしたほうが良いです。

仙腸関節の確認と刺鍼
今回、私の方法を一部公開します。
・上後腸骨棘を確認し、指で仙腸関節の関節面の陥凹を確認する。
・この場合、陥凹の大きさ・深さ、圧痛があることを確認する。
・(重要)陥凹が無い場合や圧痛が無い場合はそこの仙腸関節に問題は無いことが多い。
・陥凹に沿って2寸の5番を1、2mm感覚で刺鍼する(4本~7本程度)。
・上手く入ると60mm以上入る(体格が良い人は3寸5番を用いることもある)
・痩せている人でも30、40mmで骨に当たるのはうまく関節に入ってないので、刺しなおす。
・5本のうち3本くらい入ればまず成功。
・刺鍼角度は個人の仙腸関節の角度による。内方から外方に向けて80度くらいが多いが、中には直刺、外方から内方の人もいる(触診する指の腹を押し当て関節の裂溝に直角方法に切るように押し当てると確認できる)。
1本うまく入ったら、その角度で次の鍼も入れていくと入りやすい。深く入った鍼を雀琢すると悪いところに響く。そうなれば響けばまず治療は成功。図の右下は仙腸関節の隙間が無いので鍼が入らないことを表している

*画像はイメージ

症例
40歳台 女性
愁訴:生理前に頭痛、肩こり、不眠、イライラ
30歳台半ばより症状あり。婦人科では月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)と診断され当帰芍薬散、桂枝茯苓丸などを服用している。
当初は劇的に効いていたが、2年くらいすると薬の効き目が落ちてきた。他の漢方薬に変えてみてみるが、以前のような効きは無い。
身体所見:特に特記するものなし。飲酒、喫煙等無し。
性格的所見:こだわりが強く、趣味など熱中すると止まらない。仕事に対して責任感が強く、少々の悩みや痛みも我慢する性格。
両PSISの圧痛+(ワンフィンガーテスト+)あるが動作時痛等は無し。
両仙腸関節に2寸5番を片側5本×2を打ち込む。
打ち込んだ後に雀琢をすると、骨盤の奥の方に響く。その後置鍼13分。
このような治療をすると3か月くらい症状が無くなる。もちろん、漢方薬も要らない。

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