遠隔治療のみで治療してみました! -遠隔治療アンケート-  投稿 令和2年4月6日

原点回帰と自らの技術の鍛錬として2月~3月に来院した患者さんの何人かに遠隔治療のみの施術を行いました。
遠隔治療のみの施術とは、例えば肩こりや腰痛があっても肩や腰などの局所にはハリをせず、上下肢の反応部(ツボ)のみに切皮~10mm程度の刺鍼しかしないということです。

対象は当院に数回以上来院された局所治療をおこなっていた患者を対象に、同意を得て行いました。そして、遠隔治療後に来院された時に、その効果を元にアンケートを記入してもらいました。

1.アンケート内容
Q1.遠隔治療は通常の治療と比べ、効果はどうでしたか?
全く効かない(-3)  かなり効きが悪い(-2)  効きが少し悪い(-1)
同じくらい(0)  少し効いた(+1)  まあまあ効いた(+2)  凄く効いた(+3)

Q2.どのようなことで効いた・効かなかったと感じましたか?
効きが良い               効きが悪い
効いている時間が長い          効いている時間が短い
何となく気分が良い           何となく気分が悪い
何となく身体が軽い           何となく体が重い
その他(                                    )

2.治療
治療は寸3の1番のみを使用。症状を確認した後、頚部診、脈診、腹診、背腰部診を行い、仰向けとうつ伏せで前腕、下腿に置鍼7~13分後に症状の状態を確認し、
まだ残っている場合は座った状態または臥位で上下肢に単刺を行った。

3.結果と考察

まず初めに、今回のアンケートは施術者がある程度患者さんを選んだものであるから、その結果で統計上の優劣はもちろん語れません。
また、何人かの患者さんには「(遠隔ではなく)いつもの治療でお願いします」と断られております(もちろん、断っていただいても全然のOKです)。

考察をあれこれ述べていますが、施術者本人の臨床上の観察からの独断的なものと思ってみてやってください。

今回、11人の患者さんが協力して頂きました。30歳台~50歳台の仕事を持つ男女11名でした(男性6名、女性5名)(表を参考)。業種は製造業6名、サービス業2名、技術職3名でした。

スコアがプラス側、つまり遠隔治療のみの方が良いと答えた者が5名(No.1,2,3,5,6)、同じくらいの効果と答えた者が1名(No.4)、
遠隔治療のみの場合が良くないと答えた者が5名(No.7,8,9,10,11)でした。

効いた人と効かなかった人で職業の種類差はみられなかったというか、今回は分かりませんでした。
効いた方は比較的安定期のメンテナンスで治療をお受けになっている方、つまり私や当院の治療が合っていて長く通っている方なので心理的なものも優位に働いたかもしれません。

ただ、この表の中にはいらっしゃいませんが、肩こりでいくら首や肩背中にハリ打っても1、2日で効果が無くなっていた方で、遠隔治療を開始したらスッスッと良くなっていった方がいらっしゃいました。
これはどういうことでしょうか?

実はこの方は首肩こりの他に下肢の冷えを強く訴えていました。なので、手足のツボを使って下肢の冷えが改善するにしたがって、肩コリが良くなっていったのです。
肩こりの原因はただ単に肩周囲の筋肉に負担がかかって凝るだけではなく、ストレスや冷えで身体の循環不全が起こることでも生じやすいです。
したがって、冷えの治療することで初めて肩こりが解消していくことは良くあることです。

表を見ると遠隔治療で良い結果になった方で動悸やのぼせなどの症状を持っている方がいらっしゃいますが、
このような症状をお持ちの方で肩こりなどの身体症状を訴えている方には遠隔治療を行った方がより肩こりの要因を解消させやすかったのだと思います。

昔は自律神経症状のある方には背中や腰の華佗夾脊穴にやや深いハリを行っていましたが、背中や肩などの体表所見が分かるようになりますと、
手足のハリだけで十分だという患者さんも多くいるようです。自律神経症状などがある方の肩こり等は遠隔治療が向いていると感じています。

遠隔治療の考え方は色々あって経絡としてみる、筋連結としてみる、神経やデルマトームとしてみるなどがありますが、
なぜ手足のツボは様々なものに効くのかはよく分かっていません。

ただ臨床上では、右太衝穴にハリをすると、右の季肋部の張りが減弱しますし、太淵や経渠、列缺などはみぞおちの痞えを楽にします。
そうすることでイライラをすっきりさせたり、胃のむかつきを解消させることが出来ますが、直接期門や不容、鳩尾にハリを打っても効きが悪いように感じます。

何故、遠隔の方が様々な訴えに対応できるのか考えてみますと、私は以下の図の様なことをイメージしています。

局所の場合は肩のコリに対して直接的に肩の筋肉の硬いところに刺してコリをとりますが、
スタート(ハリをする場所)とゴール(目的の場所)の距離が短いので、肩のコリにしか効きません。

ところが、遠隔治療ではハリをする場所(足)と目的の場所(肩)に距離がありますから足→下腿→大腿→お尻→腰→背中→肩と長いルートを通りますので、
その他にも胃の調子を整えたり、のぼせをとったりすることが出来るのではないか、と考えています(イメージです)。この距離が長ければ長いほど他の症状にも影響を及ぼすと考えています。

師匠である形井先生には「手先、足先に近いほど少ない刺激で、身体を大きく変化させることが出来る」と教わりましたが、
遠隔治療が多くの影響を及ぼすのはこんなイメージ↑を私は持っています。なので”遠隔治療は遠回り治療”だとも言えます。

しかしながら、半分の人たち(No.7~11)にはあまり効きませんでした。
私なりに考察しますと、まず仙腸関節性腰痛には効きません。ハリが効くのは軟部組織であり、ハリをしたからといって仙腸関節がズズズと動くわけではありませんから。

あと、腰痛でも大腰筋など人によってはかなり硬化している場合とか、中殿筋や梨状筋のかなり硬くなりますので局所にハリを打った方が効く感じがします。
遠隔でも何回か治療すれば硬いコリにも効く可能性があるかと思いますが、直接ハリをして緩めた方が早いかもしれません。

あとは、労作性肩こりなどでも効きにくいイメージがあります。
これはさっきと逆の肩こりで肩の筋肉の直接的な負担が原因の場合は遠隔で自律神経や血液循環等が悪くなったことによる肩こりではないので、遠隔治療が効きにくいのかなと感じています。

あとは、単純に局所にハリを打ってもらった方が好きとか、効きそうだと考えている人は遠隔だけだと物足りないから効きにくいというのもあるかもしれません。

今回11人の方に協力していただき、遠隔のハリ治療を試してみましたが、遠隔だけのハリでもかなり効果は出せるのだと認識しました。
さらなる研鑚を積んでもっとうまく使えるようになれればと考えています。

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