風邪を引いてから体調が悪くなった1症例

症例
20歳代、男性、スポーツインストラクター
現病歴:3年前に就職した会社が合わなくて不眠、食欲不振、反芻思考(ネガティブなことを思い出し、くよくよするような考えを繰り返し続けてしまうこと)などから辞めてしまった。その後、3か月ほどメンタル関係の書物を読んだり、好きなことをやっていたら徐々に回復した。
2年前に現在の職場に就職、しばらくは体調も良かったが、ある時に風邪を引いてから体調が回復せず、ドライアイ、口の渇き、下痢、背中の張りが出現。

体表所見
姿勢:猫背、頭部右屈曲、左肩上がり
右の背部に筋肉の膨隆+
みぞおちとへその周囲に圧痛+


施術3回目
下痢と口の渇きは無くなった。
「目の症状はもしかしたらブタクサのアレルギーかもしれない」と。
背中の張り+
施術5回目
背中の張りも10→3くらいになった。
症状も落ち着いたので、ここでいったん終了した。

5年後に再び来院
3か月前に風邪を引いてから、ずっと体調がよくない。熱や咳は無いが、喉の違和感・つまり感+、声が出しにくい(病院では、声帯に腫れなどは無し)。左耳が難聴気味で、リンパ節が腫れている。病院では、抗炎症剤、去痰剤、むくみを取るために利尿剤が処方されている。
不眠、背中の張り感。
仕事は楽しいが夢中になってしまうと、そのあとに夜眠れなくなってしまう。
ひもろぎ式心理検査では、極軽度のうつと中等度の不安感あり。
SRQ-Dでは、やや抑うつ傾向あり。
呼吸や喉の症状と、それに対する不安感がみられる。

施術2回目
喉のつまり感無し。
睡眠は、3時間ほどで目を覚ましてしまう。
施術3回目
声は出るようになったが、無理に出すとその後出なくなる。
病院ではリンパ節の張りはまだあると言われた。
喉の違和感は「逆流性食道炎ではないか?」と
不安感は、10→4
施術5回目
眠剤を処方されたので、6時間ほど寝られている。
医師からは、「適応障害」と言われた。
施術7回目
鍼治療をした日は、眠剤なくとも6~7時間は寝られているが、その後は徐々に眠れなくなる。
背中の張り感+
施術8回目
心配で、心療内科を受診。抗不安薬と眠剤を処方された。
リンパ節の腫れと喉の違和感は-
施術9回目
抗不安薬の為か、夜21時ころに眠くなる。5時間くらい寝ている。
仕事がハードになると、夜眠れなくなり、背中の張り感が強くなる。
頸部に鍼通電を追加。
施術10回目
前回の鍼の後は、身体がかなり楽だった。
施術12回目
仕事で疲れすぎると、背中の張りや喉のつまり感が出てくるが、調子は上向いている感じがする。
施術15回目
体調は70%くらまで回復している。
不安感-
背中も張らなくなってきた。
施術16回目
1か月ぶりの施術
調子は元に戻った。
鍼治療してから、風邪を引かなくなった気がする。
その後、1か月後に来院されたが、調子が良いとのことで治療を終了した。

考察
日本の整体の大家である野口晴哉先生の著書に「風邪の効用」という本がある。その本によると風邪を引いたら、その中で上手に経過させることでからだのバランス・歪みが整い、免疫力も上げ、より健康になれると述べている。逆にうまく過ごせないと体が歪み、その後調子が悪くなってしまうとしている。野口先生は風邪を病気としてではなく、”からだを整わせるチャンス”と見ているところが面白い。逆に、脳卒中や癌にかかる人は、風邪を引きにくい(からだを整えることができない)と述べている。
そういう意味では、この患者さんは上手く風邪をこなせず、こじらせてしまった。「風邪は万病のもと」というが、治療の仕方によっては「薬にも毒にもなる」とも考えられるかもしれない。




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