扁桃炎のセンニンソウ治療の話し(現在でも存在する再現性の高い民間療法??)

先日、ある患者さんの施術中に手首の全面(内関穴付近)に赤くただれたような痕が見えた。

キャンプがご趣味ということで、焚火台の火の粉が飛んで火傷をしたのかなと思い、聞いてみたら「センニンソウの治療です」という。

センネンソウ?センニンソウ?聞いたことが無かったが詳しく聞くと、もっと驚いた。

その患者さんは小さいときに扁桃腺が腫れたときにおばあちゃんにセンニンソウを揉んだものを手首に張られること数分、扁桃炎の痛みが和らいだとのこと。

これに興味が湧いたので、ネットで調べてみることにした。

まずセンニンソウはつる性多年草で、北海道から九州まで広く分布しており、夏から秋にかけて白い花を咲かすが、その果実より銀白色の長毛が密生して生えることから、仙人のひげにたとえて、センニンソウという名前になったと言われている。

センニンソウ

センニンソウの別名には、ウマノハオトシ(馬の歯落とし)、ウマノハコボレ(馬歯欠)、ウシクワズ(牛食わず)、ハコボレ(歯欠)、ハグサ(歯草)などがあるようだ。

名前からして有毒植物であることが何となく分かる。

実際、茎や葉の切断面から出る汁や濡れた花粉に触れると炎症を起こすという。

にもかかわらず、センニンソウは、日本や中国などに自生する原種のクレマチスであり、丈夫で生長力が強く、園芸植物として人気も高いという。園芸に詳しくない私でもクレマチスは知っているが、その原種とは知らなかった。

ただ、やはり茎を切った際に出る白い液体は有毒なので注意が必要とある。

販売の方はどうかと思い、楽天等のショップのレビューを見てみると

そのほとんどが扁桃腺の治療に用いたという内容なのには驚く、そして、その結果がすこぶる良いのだ。ここまで、一薬草のレビュー内容が扁桃腺の民間療法のための購入だと、信じられないというのが感想だが、それだけ扁桃炎の症状は辛いということだ。

ネット上ではセンニンソウの扁桃腺治療の内容はいくつかみられた

おおむね次のようだ。

・生の葉1~3枚をよく揉んだりすり潰して、葉っぱの組織を破壊する。

・それを片側の手首の内側(太淵~内関)に貼り,ガーゼや絆創膏などで軽く固定する

・約5~30分ほどで発赤して、ピリピリした痛みが生じてくるので、そこを軽くぬるま湯で洗う。

・翌日あたりにその場所が水泡(水ぶくれ)になるので、それを出来るだけつぶさないようにする(消毒した針でつぶすとするものもある)

・その場所は清潔なガーゼや絆創膏などで保護する。

・この痕は数か月から半年は残ることが多い

効果は何とかなりの割合でその後高熱が出なくなったとする記事がほとんど(というより効かなかったというものは無かった・・・)。

ここで驚くのは痛みが軽減させるとか、熱があまり上がらなくなるというものではなく、“扁桃炎自体が出なくなる”つまり、治るということだ。

ここまで効果が高い民間療法は他に聞いたことがない。

センニンソウの毒によるかぶれを人工的に引き起こして、身体の免疫機能を賦活させることによって扁桃炎を治しているのかなと考える。

・人工的にかぶれを引き起こす

・そのかぶれが長く続く

これは鍼灸で言う“打膿灸(だのうきゅう)”と似ているかもしれない。

打膿灸は親指大の巨大なもぐさを用いて、身体の一部(腕が多い)に人工的に火傷を作り、その上に特殊な膏薬を貼付すると、その火傷が化膿する。

排膿しながら、この火傷の瘢痕は治癒まで1~2か月かかるが、その間に生体の防衛機能が高まると言われている。

一度、北京の研修である老中医に講義を受けたことがあった。そのお灸がものすごく熱いのでお灸の周囲をバンバン叩いて、お灸の熱さを紛らわすというものだった。

センニンソウの扁桃炎の治療の正式な機序やエビデンスは不明であり、センニンソウも個体によって毒性が強いものなどもあると考えられるので、(効果のほどは確認したことは無いが)素人は簡単にまねしない方が良いと考える。

話をしていただいた例の患者さんは扁桃炎が治ったそうだから(ただ、のどのイガイガには効かなかったともおっしゃっていた)、嘘ではないと思うが、毒性や安全性を考えるとおいそれと薦められない・・・。

私は扁桃炎を腫らしたことが無いし、周りでもいないので試せないのだが、実際の効果は気になるところでもある。

生体に何らかの侵害刺激を与え、免疫機構を賦活させる治療法は身体を傷つけるので、一般に世間に広がりにくいのだが、新型コロナの問題から世の中にはさらに“消毒”“殺菌”“清潔”など病原微生物などを殺したり、遠ざけるために消毒用エタノールやその他の消毒薬、手洗い、マスクの習慣が当然なことになっている。

個人的には人工物や過度の消毒で免疫機能を休ませ過ぎないことも大事だと考えている。

このようなことを言うと不謹慎かもしれないが、過度な消毒も手洗いも不要であり、自然界の微細な毒物は人体の中に入れることで免疫を強化させることは生物として備わった大切な装備品であり、大事なことだと思う。

このような悪いものは隔離するという考え方は如何にも西洋的な思想ではあるが、悪いものをそれなりに受け入れる東洋思想の方が長期の視点で見ると正しいことが多く、私は個人的に好きである。

現在でも存在する素直な治療と生きた民間療法の話しでした。

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