5年間続いた下痢に鍼灸治療が有効だった症例

先日、第17回東洋療法推進大会in鹿児島で症例発表したないようについて報告いたします。
お悩みになっている方の一助になればと思いましたので、公表いたします。
以下内容は発表内容を少しわかりやすくしたものです。

症例

60歳台、女性。数年前より母親の介護開始。母親が遠方で生活していたため新幹線を使って、行ったり来たりしていました。

その疲れからか脳出血2回(幸運なことに後遺症等はほとんどみられなかった)。
その後、めまい、耳鳴りなどの症状があったため、耳鼻咽喉科を受診しましたが医師からは問題ないと言われ、心療内科を受診することを勧められました。

A心療内科では不安神経症と診断され通院していましたが、そのうちに下痢症状が出現(X-5年)。
3か月ほど通院するもめまい、耳鳴り、下痢症状が変わらないためB心療内科を受診。
そこではうつ病と診断されました。

下痢症状に関して近医の内科を受診しましたが、下痢症状に変化見られないため、別の胃腸科を5年ほど通院するも、症状に変化はみられていません。
X年X月に当院受診。

下痢の症状

下痢症状についてもう少し詳しく言うと、
内科では症状が変化がみられないと次々服薬処方を変えていきましたがすべてが無効で終わりました。
胃腸科では4種類の薬を処方しているが、効果はみられていません。
毎回、診察時に効果が無いことを医師に告げるが「このままで続けてください」というのみで、5年前から服薬の種類は一切変わらず、現在も同じ処方のものを服薬し続けています。
B心療内科は継続通院。
早朝より便意があって、午前中に4,5回トイレに駆け込む。便性状は水溶性便~軟便。夜間も便意を感じて何回か起きてしまう。それが、5年間以上続いている。
胃腸科では基本的に薬の変更はしない方針らしいです。

治療

週2回のペースで通院。
陰谷、曲泉、陰陵泉、足三里、太谿、少海、手三里、太淵に単刺、中脘、水分、天枢、陰交に施灸。左翳風、風門、肺兪、心兪、膈兪、肝兪、脾兪、腎兪、大腸兪に10分置鍼後、同部位に施灸を行いました。

結果

施術3回目ほどでほぼ水様便だったものが数か月ぶりに形のある便がみられるようになりました。
17回ほどでほぼ軟便になりました。
40回ほどでほぼ普通便になりました。
治療終了。

服薬は担当医と相談しながら徐々減薬し、最終的にはすべての下痢に関する薬をやめることが出来ました。
心療内科系のお薬はそのまま。

考察

今回、特に変わった治療法はしていません。鍼灸師なら一般的に選択するツボばかりです。
しかしながら、下痢が全く改善したことを考えると、このような症状には鍼灸治療で改善する可能性があると考えられます。
心配事も多かったため、治療しながら傾聴したことも効果を生んだかもしれません。

因みに鍼灸刺激とヒトの腸蠕動に関する論文では、鍼灸の刺激は交換神経を介して行われ、
腸蠕動を促進するには腹部の鍼通電刺激が、抑制するには腹部への灸刺激が効果的であることが示唆されております。
自宅で旦那様に腹部や背部の灸をセルフケアでやっていただいていたことも功を奏したと考えられます。

また、耳鳴りやめまいに関しては一時的に自他ともに満足できるほど改善がみられましたが、その後あることをきっかけに増悪緩解を繰り返しましたので、
こちらに関しては下痢程効果ありとはいえませんでした。

余談ですが、当初B胃腸科の医師は鍼灸の影響を認めませんでしたが、全く下痢便を起こさなくなってからはしぶしぶ?効果を認めたということです。
うれしいというよりも、医師や医療機関に鍼灸が浸透していないことを考えさせられました。

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