身体表現性障害で休職していた症例 平成31年3月18日投稿

<症例>
30歳台、男性
現病歴
3年前に家族の不幸があってから、のぼせ、めまい、頭痛、耳鳴り、イライラする、気分が沈む(特に午前中)、易疲労感、寒気、だるさ、吐き気、不眠、便秘・下痢などが出現。特に天気が悪い時や食後に急に寒気やめまい、だるさなどが出現し、立っていられなくなるという。
次第に会社を1回/月、1週間休むようになり、来院2か月前からは休職することになった。
その間、内科1軒、心療内科2軒(2軒目は1軒目からの紹介状による)受診し、身体表現性障害と診断。現在、2軒目の心療内科でフォロー中であり、寒気や不眠はやや改善したが、その他の症状に変化はみられない。
ご本人は首~背中のコリが強くなると、症状も↑なので、コリが改善されればすっきりするという。また、併せて起床後の気力・意欲の低下が改善されれば仕事に復帰したいと考えていた。

<治療>
1回/1週~2週のペース。
全身的治療をベースで行い、随時鍼通電療法(EAT)や星状神経節・上頚神経節刺鍼法などを加えた。
特に交感神経の過緊張を抑制するために頚部や背部の筋緊張緩和を重点的に行った。

<評価>
首肩のコリや自律神経症状をVASで評価し、自律神経症状の評価表としてTMI(東邦メディカルインデックス)を、 うつ傾向の評価法としてSRQ-D(東邦大式うつ状態自己評価尺度)を用いた。

<結果>
治療開始2回目以降、新しく服用を開始した抗うつ剤が合わず、朝起きることが出来ない、吐き気、食欲不振などの症状が出たため服薬中止するまで、鍼灸治療を1か月中止した。その後、元の薬に戻し症状が落ち着いたため再開した。
耳鳴り、めまい、吐き気はなかなか改善の傾向がみられず、翳風穴刺鍼、内関穴刺鍼、星状神経節・上頚神経節刺鍼法などを試したが大きな変化はみられなかった。
EATを背部や肩、後頚部に試してからは徐々に筋のコリ感の緩解と共に起床時の気力の低下、朝のだるさ、易疲労性、睡眠等は改善する傾向がみられたが、耳鳴り、めまい、吐き気は大きな変化はみられなかった。

TMIやSRQ-Dのスコアは徐々に減少し、肩のコリや自律神経の症状も徐々に減少した。
項目では睡眠、だるさ、易疲労性、気分が沈む、イライラするなどが改善した。

<考察>
以前、パニック障害で通院されていた患者さん(主訴:動悸)で「肩や背中のコリは楽になったが、動悸は変わらず、むしろ鍼治療した後に出てくる」と話されたことがあった。しかし、また別の患者さんでは「背中の治療をすると動悸が起きづらくなる」と言われたこともあった。
肩甲間部の筋肉の緊張と、それを緩和させることで自律神経症状が改善するのか、変化しないのか、悪化するのかはまだ(私の中で)結論が出ていなく、患者さん個別に対応するしかないというのが現状である(これについてはそのうちにまとめようとは思う)。
良い傾向としては患者さんの睡眠が改善され、気分が楽になったので、朝起きることが出来、積極的に散歩なり、外出をするようになったことである。
自律神経障害の患者さんは生真面目の方が多く、さらに失敗を強く恐れたり、完璧主義であったり、頑固であったり、ネガティブ思考であることが多いように思える。
考え方を変えることは簡単なことではないが、改善した患者さんには往々にして、少しいい加減で柔らかい思考をもったり、考え方(良い意味で適当)を変えることで楽になっていった方も多い。
まずは十分に休息し、からだを整え、その後、身体を動かしたり、趣味などを持つこと(暇だと悪い方へ考えてしまうので)であまり考える時間をあたえないようにすることが必要だと考えている。
因みに、この方は現在、来月からの職場復帰の準備を少しづつ進めているところである。

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