コリン性蕁麻疹が疑われる痒みに対するお灸の症例

症例:30歳代 女性
愁訴:皮膚のかゆみ

小さい頃から運動したり、お風呂に入ったりして身体が暖かくなると体が痒くなる。
また、疲労がたまってくると夕方~夜に痒くなる。痒くなるのは、腕や下肢。
痒みは1年中ある。花粉症(スギ)があるが、その時期に悪化するということは無い。
病院では、“蕁麻疹”と言われ、飲み薬と塗り薬を出されているが、飲み忘れたりすると痒くなる。お子さんも同じような傾向がある。

恐らく「コリン性蕁麻疹」ではないかと考えている。
コリン性蕁麻疹は、発汗をつかさどる「アセチルコリン」という神経伝達物質が関与して起こる蕁麻疹で、風呂上がりや運動後など、汗をかくことでアセチルコリンを誘発し、これが皮膚の肥満細胞を刺激してヒスタミンが放出されることで、痒みが出ると言われている。
したがって、病院で出された薬は、抗ヒスタミン薬ではないかと思う。

当院では、花粉症の症状に対して星状神経節刺鍼を行っており、ある程度の鍼の効果を実感している。蕁麻疹の痒みは、この花粉症と同じく体内でアレルギー症状を引き起こす「ヒスタミン」という化学伝達物質が引き起こしていることから、同施術を行ったが、効果がみられなかった。

次に蕁麻疹などの皮膚のかゆみに使われる裏内庭(うらないてい)と肩髃(けんぐう)というツボを使ってみた。まず、裏内庭にお灸をしてみたが、効果無し。次に肩髃にお灸をしてみたところやや効果がみられたので、圧痛が強かった近くのツボである肩尖(肩甲骨の肩峰という場所の先端)にお灸をしてみたところ見事に痒みが消失した。この肩尖だが、福島哲也先生の著書“深谷灸法による病気別症候別灸治療―患者のからだに聞け―”では、痒みには肩髃よりも肩尖が効く、と記している。

鍼灸のアレルギー症状に対する報告はいくつか見られるが、作用機序については分かっていないようだ。報告の中には、血液検査での変化は見られなかったとする文献があるので、抗ヒスタミン薬のように受容器の結合をブロックするようなものではなく、自律神経を整えることで、過敏性を抑えたり、花粉に対する反応を鈍感にするような作用があるのではないかと考えている。

ただ、今回のように星状神経節刺鍼では駄目で、肩尖のお灸で痒みが消失した理由は分かっていない。その肩尖のお灸も効果は2週間程度で、それ以上だと痒みが出てくるので定期的に行う必要があるが、試してみる価値はあるかと思う。

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