灸によって緩解した口角炎 平成31年4月24日投稿

口角炎は唇の両端(口角)に炎症を生じ、亀裂や腫れ、痂皮(かさぶた)ができる皮膚疾患です。疼痛を伴い、特に口を大きく開けたりすると亀裂ができて裂け、痛みや出血を伴うことがあります。

原因としては、
①口角部分の細菌感染(ブドウ球菌、連鎖球菌)、真菌感染(カンジタ)、ウイルス感染(ヘルペス)など
②栄養素の不足(鉄欠乏など)やビタミン不足(主にビタミンB群、ビタミンA)など
③機体的刺激(入れ歯が当たる、かみ合わせが悪い、化粧品によるかぶれ、唾液の付着など)
④薬剤の長期服用(ステロイドなど)、糖尿病、食物アレルギーなど
などが考えられます。

治療としては、
口角への機械的刺激があればその刺激原因を除去したり、感染症によるものであれば、原因菌に対して、抗菌薬の内服や外用を使用します。
鉄の欠乏やビタミン不足の場合はその補充を行い、内科的疾患があるなら疾患治療を行います。
また、症状がある口角には、状況に応じてワセリン塗布による保護や刺激を緩和するステロイド外用剤を使います。
また、最近だと、炎症が起きている口角部にレーザーを当てる治療などもあります。

鍼灸の口角炎のアプローチは?
鍼灸の口角炎に対する主だった文献、論文等はありませんが、専門書等をひも解くと経絡的には手の大腸経や足の胃経などのツボを用いたり、局所的には地倉というツボを用いたり、首の後ろにある身柱や風門などのツボを用いたりしています。

症例
60歳台、女性
当院で他の症状に対して鍼灸治療を行っていましたが、実は4か月前から口角炎になって、歯科医院で治療を行っているとのこと。
治療は局所へのレーザー治療とワセリン塗布を行っていますが、症状の緩解はみられないとのことでした。
食事、睡眠、排便・排尿、運動は特に半年前から現在において変化はないが、母親の介護・通院などのストレスはあるということです。
施術は通常の鍼治療に加え、曲池、手三里、合谷のうち圧痛が強い2か所(左右で4か所)に直接灸7壮(シール2枚重ね)を行いました。
初診時の口角の状態

2週間後(3回目の治療前)の状態

*今回、同じスマホで撮影しましたが、どうも天候の違いによる光の加減で色合いが変わってしまいました。なにぶん素人なもので・・・申し訳ありません。

3回目の治療時には、目視で確認できるほど口角炎が良くなっていました。
今回、手の大腸経の経穴に直接灸を行うことで、口角炎が緩解しました。それまで、歯科でレーザーやワセリン塗布による治療で効果がみられませんでしたが、数回の施灸(+全身の鍼治療)で、本人も納得できるほど症状が良くなりました。

手の大腸経は人差し指から始まり、前腕、上腕を通り、顔面部(口、鼻、目)に到達し、顔面部の症状に効果があるといわれております。

お灸ではないのですが、鍼の合谷への刺激効果として網膜循環血流の増加が認められたという報告や麦粒腫(ものもらい)の沢田流二間への施灸の特効的反応があることから、上肢部への鍼灸が顔面へ何らかの影響を及ぼすことが考えられます。

今回、歯科での4か月の治療で変化がみられなかった口角炎に鍼灸、特に合谷、曲池、手三里への直接灸をすることで症状を緩解させることができました。

もし、似た様な症状でお困りならば、どうぞお試しください。
そして、治療によって変化がみられなかった場合は医療機関を受診することも付け加えておきます。

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