左下肢痛と左膝痛が骨盤や腰周囲から来た症例

症例:70歳台  男性 
職業:農業
愁訴: ①左上肢を挙上させると左下肢の後面が痛い
    ②歩くと左下肢後面と左膝前面が痛い

現病歴:1週間前より、①の症状出現。立位で出現するが、座位ではそれほど痛くない。
草刈りが忙しくて、それが原因かもしれない。
所見:左腰背部に筋肉の膨隆+、圧痛は-
左PSISの圧痛+、左ASISの圧痛+
左パテラの運動痛+、左大腿直筋の圧痛+、膝関節屈曲痛-

評価:夏の草刈り作業(草刈機械)は農家さんの体を壊す原因の上位に位置する。
とくに川際の斜面(のり面)の草刈りなどは腰や背中、下肢の踏ん張りがきつく、毎年この作業で腰を悪くする人が出てくる。今回も、草刈り作業で腰や骨盤の筋肉たちを疲労させ、下肢の神経症状を起こさせるまでに硬化したと考えられる。PSISなどに圧痛が出ているので仙腸関節にも障害を起こさせている可能性がある。

施術:左腸骨筋、左大腿直筋、左中殿筋、左大殿筋、左大腰筋、左脊柱起立筋、左仙腸関節に鍼をした。

経過:3回の施術で①の症状は-になったが、10分くらい歩くと②の症状が出てくるという。歩行を辞めて前かがみや座ると楽になるというので年齢の考慮し、脊柱管狭窄症を疑い医療機関の受診を促した(結局受診はしなかったが・・・)。因みに正座しても膝の痛みは-。
脊柱管狭窄症様の症状があるので神経根深くまで3寸の鍼を入れたら、かなり固い硬結があったので雀啄して置鍼した。すると歩行が少し楽になったというが、まだ歩行に差支えがあるという。
そこで、左仙腸関節に注意深く鍼を6本打つと、そのうち3本を深く入れた際に左ひざの上に重苦しい響き感が伝わった。それから膝の上の痛みは無くなった。
膝の関節周囲の問題ではなく、腰や骨盤周囲の筋肉のトリガーポイントでもなく、仙腸関節の関連痛だったようだ。
7回ほど同様の鍼治療をしたら歩行時の②の症状も無くなった。
以後は数週間に一度、農作業が忙しくなると②の症状が少し出てくるが前ほどでもないので気にならないとのこと。そして、楽になったのか来院されなくなった。

考察:デルマトームに沿らない関連痛はしばしばみられる。その場合はトリガーポイントや仙腸関節の関連痛なのでそこに鍼をすると治癒することもよくあることだ。
今回は年齢的なところや普段から肉体労働していることからくる変形もあり、脊柱管狭窄症かもしれないから鍼は効かないかな・・・と考えたが、良くなったことからそうではなかっかもしれない。
いずれにせよ、真正の脊柱管狭窄症は医療機関の範疇であるが、偽性?のものは鍼灸や整体が効くものも多々あるのではないかと考えられるので、挑戦する意義は大きいと思われる。ただし、きちんと深部筋の硬結に鍼が打てることと仙腸関節を調整するすべは必要かもしれない。
浅刺しの全身治療で良くなるのならば、それに越したことは無いが・・・(それができないひがみかな??)

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