前立腺肥大症の症状に鍼は効くのか?

前立腺は男性のみ存在する器官で、その形態は栗の実様で、膀胱から出た尿道がその中心を貫いています。また、前立腺液という精液の一部を作っています。

前立腺の線組織は尿道粘膜下の内腺(小腺)と、その外側にある本来の前立腺の腺組織である外腺に区別できます。

〇前立腺肥大の症状
前立腺肥大症の排尿障害のメカニズムは2つの要因に大別されます。
機械的閉塞と機能的閉塞です。機械的閉塞は機械的閉塞とは、肥大した前立腺の組織により尿道が圧迫されて尿道が閉塞することです。機能的閉塞は自律神経(交感神経)が過敏になり、前立腺の平滑筋が過剰に収縮し、尿道が閉塞することです。

上記の理由により、様々な症状を発生させます。
・残尿感(おしっこをしてもまだ残っている感じがあること)
・頻尿(特に夜間頻尿が顕著)
・尿意切迫(急に排尿したくなって我慢できなくなること)
・尿失禁(尿を漏らしてしまうこと)
・遷延性排尿(おしっこが出始めるまでの時間が長くなること)
・苒延性排尿(おしっこが出始めてから終わるまでの時間が長くなること)
・尿線細小(おしっこがチョロチョロとしか)
・尿の勢いがない
・排尿するときにお腹に力を入れないと出にくい

〇症状・QOLスコア
症状の状態をみる為に国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコアが一般的に使用されています。
また、主要下部尿路症状スコア(CLSS)は日本で開発された質問票であり、前立腺肥大症と診断されていない段階で有用であるといわれています。

〇当院での前立腺肥大症の鍼灸治療の報告
<症例>66歳、男性
<現病歴>
60歳台に入り、排尿後に尿がまだ残っている(残尿)、頻尿(排尿後2時間以内にトイレに行きたくなる)、尿の勢いが弱い、排尿時に力まないと出ないなど症状が出現。5年前に泌尿器科で前立腺肥大症と診断されました。
服薬治療を行っているが、あまり大きな効果(満足いく効果)がみられていないようです。
当院では、もともと股関節痛で通院されていましたが、前立腺肥大の辛いお話を聞いて、治療開始(元々の治療に追加する形で行いました)。
<効果判定>
効果判定として治療の都度、NRS(0~10の11段階、0が症状無し、10が最も辛い)と国際前立腺症状スコア(IPSS)を記入していただいた。
<結果>
初回治療前症状の辛さ(NRS):10 ⇒ 2回目 治療前5と減少しました。
初回治療前スコア(IPSS):25点/30点 ⇒ 2回目 治療前14点/30点に減少しました。症状では特に残尿感、頻尿、排尿時のりきみなどが改善しました。
ただし、治療すると症状の改善は3週間くらいもつが、その後は元に戻るようでした。


<考察>
前立腺肥大症への鍼灸治療の効果は、治療終了後1~3か月で元の状態に復すると報告されており、高度な肥大には効果はみられにくく、軽度な前立腺肥大と診断されたものに鍼灸が適応するといわれています(北小路博司先生らの報告)。
今回の患者はすでに5年前より泌尿器の病院に通院しており、服薬もしていましたが、納得いく改善がみられていませんでした。
前立腺肥大症の症状はけっして軽くないのですが、1回の治療で3週間は良い状態を維持することが出来ました。鍼灸により症状の改善がみられたこと、治療効果は約1ヵ月程度あることを考えると前立腺肥大症のケアの一つに鍼灸を取り入れることは悪くないと思います。
1~2回/月程度の継続的な鍼灸治療で、限定的ではありますが、鍼灸施術が泌尿器の症状を一時的に改善させる可能性はあると思います。

気になる方は当院の鍼灸治療に関してお問い合わせください。

コメント