患者:70歳台 女性
愁訴:歩行時や寝返り時に両方のふくらはぎに痛みが生じる。
特に寝返り時の痛みがあるために熟睡できない。
杖歩行している。股関節と膝関節にやや拘縮があるため、これらの関節の完全伸展ができないこともあり、歩行時の安定性が悪い。ふくらはぎの痛み以外にも膝の内側の痛みがある。
腰痛は無いが、腰椎の可動域はあまりよくない。ただし、運動痛は無し。
間欠性跛行無し。
下肢の痺れ等無し。
年齢的にふくらはぎの症状は脊柱管狭窄症を疑ったが、その症状はみられない。
治療
腰に3寸8番を用いて探るが、脊柱管狭窄症様の症状を引き起こすような硬結等もみられず。手ごたえ無し。
そのため、股関節・膝関節の伸展を制限する屈筋である腸腰筋、大腿四頭筋と脛骨・腓骨に停止する大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、膝窩筋、ふくらはぎを構成する下腿三頭筋などの筋緊張に鍼をして、筋肉の緊張緩和を狙ったが変化がみられなかった。
そこで仙腸関節のズレからくる痛みと考え、左右仙腸関節に2寸5番を内→外約80度で数本入れ、うち数本を5cmほど入ったところで重苦しい痛みがふくらはぎに放散した。そのあとゆっくり横臥位になってもらって、運動鍼をして仙腸関節のAKAを行った。
すると、1回で痛みが半減し、2回で消失した。
村上先生の成書によると仙腸関節障害では以下の領域に痺れ・痛みを生じさせる。
日頃の臨床では、デルマトームやトリガーポイント以外の痛みのパターンを占めることが少なくない。
そのような時は仙腸関節障害を疑うことも必要ではないだろうか?
特殊な手技でなくても、鍼でも緩和可能だと考えている。
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