のぼせと発汗の症状に対する鍼灸治療の1症例

この方は、以前に同じ症状で通院された方です。
経過を言いますと、前回は新型コロナワクチン接種後の翌々日より、早朝にのぼせと発汗の症状が出現。11月というのに、半そでと扇風機が欠かせない。内科、婦人科を受診するが、検査に異常は無し。当帰芍薬散を服用するが、朝の症状に変化はない。
ということで、当院で8回の鍼灸治療で症状は消失した。
(2022.01.26 あすなろ臨床ノート ホットフラッシュに対する鍼灸治療の1症例参考)

それから3年・・・のぼせと発汗は起きていなかったが・・・
令和6年7月に風邪のような症状(発熱)がでてから、再び同症状が出現。今回は夏場ということもあり、エアコンは20℃前半でかけていて、暑くて暑くてという。
一応、婦人科を受診するが、検査に異常が見られず、漢方薬を処方されるが変化がみられなかった。
8月下旬に当院を受診。

初回、2回目、前回同様の治療を行うが、全く変化がみられず少し焦るが、本人は「前回8回で治ったので気楽に構える」ということで、3回目は少し考察した。
まず、東洋医学的にのぼせは、熱の還流が上手くいかず、上に停滞した状態で起きる。つまり、この熱をどこかに動かすか、発散させれば良くなるということだ。
今回、前回同様の治療とは言ったものの、頭への刺鍼はしていなかったので、3回目から発散を目的に百会と神庭への2Hz、15分の鍼通電と熱を下に降ろすことを目的に太谿に透熱灸を施した。
3回目の治療後に症状が↓、その後症状がほぼ消失した。

のぼせ・発汗が改善した理由
①9月中旬より気温、特に朝晩の気温が下がった為
②トータル3回の治療の蓄積によるもの
③3回目の治療が効いた
④自然経過で治った

①に関しては、ご本人も9月は寒い日もあったが、暑い日も結構あったし、前回症状が出たときは冬だったので気温はあまり関係ないと思う、という。
④に関しては難しいところだが、発症した7月~8月はずっと症状が続いていたことを考えるとあまり濃厚ではないと考えられる。
したがって治療による消失である②か③であるがこちらはどちらとも考えられる。前回は8回の施術と言っても、4回目の施術でほぼ症状が消失していることから、今回は3回で消失したことも十分考えられる。ただ、前回は初回の施術から効果が出始めていることから、3回目のポイントが”身体のナニカ”を動かした可能性がある。特にこの方は頭頂部のむくみ、太谿の陥凹が認められたので、身体のサインは出ていた。エビデンスはさておき、私は体表所見の反応を診て、それに対応する場所の愁訴を緩解させるような治療を日ごろ行っているがそれで十分な結果が出ているので、根拠はあると考えている。
では反応が出ていないところを鍼や灸で刺激することは駄目なのか?これに関する答えは分からない。中国などの治療はあまり体表部の反応を確認して刺鍼するということがないと聞いたことがあるので、効果はあるのかもしれない(けど、私には分からない)
鍼や灸などの物理療法の療術は、あるポイントを刺激する(隠しコマンドを入力)ことで、身体に変化を起こす(HP、MP回復)ものであり、逆に言うとポイントを刺激できなければ、変化を起こすことが出来ない。これが上手い下手。名人と凡人の違いなのかもしれない。

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