首・肩・腕・指・背中の症状

寝違え
効果
代替性
鍼の響き
総評

寝違えは「首のぎっくり腰」のようなもので、ストレスや疲労、寝不足、肩こり、首コリなどが複合的に絡まって生じている症状で、”心身ともに疲れてますよ~”というサインだと思ってください。つまり、首だけの問題ではないということです。したがって、患者さんに問診していると「疲れてソファーで寝落ちしてしまって・・・」というパターンにしばしば遭遇します。

発生機序としましては、ストレスで自律神経がアンバランス → 脳機能の不具合により、首の筋肉を緊張 → そこに寝不足や疲労、飲酒などで寝返り回数が減少して、変な姿勢で長時間寝る → 朝起きると”首がいてえ~” という現象なのです。

したがって、施術では首だけを治療するのではなく、自律神経のバランスを整えることや人によっては背骨や骨盤の歪みも診ていかなければなりません。もちろん、生活環境や仕事の負担を見直したり、運動、睡眠なども確認するのは大事になります。

効果:首を中心とする筋肉のコリを鍼でほぐすと首が動くようになりますが、ストレスや疲労が取り切れていないと繰り返すのでやはり根本から治療する必要があります。予防も含めると、最低5回は必要です。そのくらいやると首が軽くぐるぐる動くようになります。

代替性:整体でもマッサージでも胸椎の歪みや肩甲挙筋等のコリなどをうまく取れれば、良くなりますが、直接原因筋にアプローチできる鍼には劣ります。

鍼の響き:そこまで痛くないと思います。1~3番の太さの鍼を使うことが多いです。

総評:基本的に寝違えはほっといてもいずれ治るものがほとんどです。ただ、中には何度も繰り返したり、何日も首が動かせないようなものもあります。そのような時はきちんとした施術所などに行ってしっかり腰を据えて治療してもらう方が良いと思います。
それと、多くは疲労の蓄積、寝不足、生活の不摂生、運動不足がベースにあるために生活のリズムを見直すことも重要となります。

頚椎症(むち打ち)
効果
代替性
鍼の響き
総評

停車時に後方からの追突事故で起こることが多いのですが、追突させる衝撃で前・側頸部が損傷し、ヘッドレストにぶつかった衝撃で今度は前に振られ後頚部が損傷し、まるで頸部が鞭のようにしなることから”むち打ち”という俗名が知られるようになりました。医療機関では「頚椎捻挫」や「外傷性頚部症候群」と診断されます。

首の痛みの他に、めまい、耳鳴、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの症状が出たりすることがあり、これを「バレ・リュー症候群」と呼びます。自律神経症状が強いと安定剤等を処方されることがあります。

また、むち打ちは被害者に大きな心的ストレスを引き起こすために、追突の状況の他に、加害者や保険会社の対応や担当医師の対応によっても、症状が治りやすかったり、治りにくかったりするという報告もあります。

効果:鍼灸はむち打ち症に一定の効果がありますが、首肩のコリや寝違いとは違って2か月ほどかかる場合もあります。バレ・リュー症候群など自律神経症状が出ているときはさらに+1か月ほど期間がかかります。

代替性:強い指圧やマッサージを受けると悪化する場合があるので注意が必要です。また、整体などで首の矯正をするようなところも注意しましょう。医師の相談もなしで、直後にカイロプラクティックで首の矯正を行うと、保険会社の査定で不利になるということを聞いたこともありますので、ご注意ください。分からないときは掛かりつけの整形外科医に相談するのが良いと思います。当院も事故直後の場合は首への施術は避けて、手足などにある首のツボの治療を行います。

鍼の響き:そこまで痛くないと思います。1~3番の太さの鍼を使うことが多いです。

総評:自賠で鍼灸を受けようとすると、保険会社が嫌がるために受けられないことが多いので、当院ではほとんど事故直後のむち打ちの患者さんが来ないです。内容を詳しく知りたい方は当ブログを参考にしてください。したがって、当院で治療を受けているのは、症状が重くて治療期間が長期になってしまった患者さん(つまり保険会社が自賠責内の支払い制限を諦めた”匙を投げられた”患者さん)です。このような患者さんは当然、重症であり、心理的ストレスもかなりのものなので数回で治るものではなく、やはり多くの期間がかかります。

*因みに当院は「むち打ち治療協会」のようなものには加入していません。

『交通事故の患者さんから連絡がきた ー保険会社の真実ー』
本日、あるお電話をいただきました。それは、「交通事故に遭ったのですが、そちらで治療したいのですが宜しいですか?」というものでした。 この手の電話は、本当にいつ…
首・肩こり
効果
代替性
鍼の響き
総評

効果:肩こりはデスクワークのお仕事をなさっている方や下を向いての作業が多い方に良く起こる症状で、姿勢の悪さに起因することがほとんどです。悪い姿勢とは、体幹よりも頭が前に突き出し、肩と背中が丸くなっている状態です(下のイラスト)。このような状態が長時間続くと首と肩の筋肉が緊張し、コリが出てきます。このような首や肩、肩甲骨付近のコリの緩和に鍼は効果があります。

000

また、ストレスが首コリや背中の張り(主に右)を引き起こしたり、胃腸の疲れが背中の張り(主に左)を引き起こしたりしますので、やはり首肩だけでなく、背中の背骨の筋肉の治療をすることが必要です。

1,2回でも効果がありますが、やはり本当に実感として馴染んでくるまでには5回はかかります。さらに10回くらい(2、3か月くらい)継続されると、首の肩のコリの持続的緩和や自律神経系が整ってきますので、睡眠の質の向上や食欲、体が疲れにくくなる、風邪をひきにくくなる、身体が軽いなど付加価値がでてきます。

代替性:寝違いでも述べさせていただきましたが、直接原因筋のコリにアプローチできる治療法なので、他の施術よりも優れていると思われますし、コリから生じる頭痛やめまい、目や体の疲れなどが解消していくので、決してコスパが低いことはないと思います。

鍼の響き:そこまで痛くないと思います。1~3番の太さの鍼を使うことが多いです。

総評:鍼灸の治療が嫌いでなければ試してみる価値はあります。また、同時に姿勢の悪さを直していく必要がありますので、背中、腰、腹筋をトレーニングすることで支えとなる体幹を鍛えることも予防のために必要になります。

肩こりについて詳しく見る

五十肩
効果
代替性
鍼の響き
総評

鑑別:五十肩は腱板断裂・腱板損傷(炎)との鑑別が重要です。drop armテスト、棘上筋テストなどの徒手検査を行い、陽性の有無を確かめます。強い陽性初見が確認された場合は腱板断裂等が疑われますので、医療機関の精査が必要だと考えています。

また、五十肩のステージによって治り方が違ってきます。それと疼痛が収まり、拘縮してきたら可動域を広げるリハビリは可動域制限を残さないためにも必須となります。
疼痛期:関節可動域の制限がみられず、痛みだけが生じる時期です。
夜も寝られないくらの激しい痛みの場合は石灰沈着性腱板炎や腱板断裂の可能性があるため医療機関の受診をお勧めいたします。激しい痛みは炎症を示唆されますので、鍼灸などより、鎮痛剤等の方が楽になるからです。
拘縮前期:痛みと共に徐々に肩の可動域制限が表れてくる時期です。
拘縮後期:拘縮が完成された状態(肩がどの方向にもあまり動かない)です。

効果:結論から言いますが、鍼灸では疼痛期はほとんど対象となりません。これは、病態の中心が”炎症”だからです。
五十肩の治療は、”疼痛期の炎症”と”拘縮期の筋・健・関節の動き”をどう治すかということだと考えておりまして、炎症症状に対して鍼はアドバンス的な効力はほとんど無い!と思っております。それは、”鍼灸は組織損傷を起点とする局所の血行改善が主なるメカニズム”であるため、疼痛期の炎症には消炎作用は働かない(働きにくい)ので、効果が出にくいと考えています。
昔から鍼灸界隈でも「疼痛期の五十肩に手を出すな」と言われているし、リハビリ界隈でも「疼痛期が治まり、拘縮期になってからが本番」と言われているそうで、この疼痛期の介入はなかなか難しいのだろうと思われます。

実際に痛みが強い疼痛期では治療直後は少し楽にはなるが、炎症が治まったわけではないからまたぶり返すことになるので治療成績がすこぶる悪いことを経験しております。したがって、この時期は鎮痛剤やシップを駆使したり、患部を冷やさないことと、痛くない方向(主に内外旋など)の自動運動を消極的に行うことがベターではないでしょうか?

逆に”痛みは楽なったけど、可動域が悪い”拘縮期では、硬くなった組織を柔らかくするために鍼灸はリハビリと並行して積極的に介入できると考えています。

代替性:五十肩の治療は疼痛緩和と可動域の拡大にあります。鍼灸は痛みの緩和と可動域の拡大に寄与しますが、痛みが強い場合は無理せず医療機関での治療を優先してください。可動域に関してはリハビリが欠かせませんが、鍼灸を一緒に導入するとより良くなると思います。

鍼の響き:使用鍼は3番、時には5番を用いますので少し響きます。

総評:鍼灸は痛みの強い疼痛期には向かず、痛みが落ち着く拘縮期にその真価を発揮できます。

上肢のしびれ・重苦しさ(頚椎症性神経根症、頚部椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群など)

上肢の症状は主に①首か②鎖骨・肩甲骨周辺か③肘か④手首の問題です。酷くなると寝ても起きていても痛みや苦しさが続きます。


頚椎症

効果
代替性
鍼の響き
総評

加齢によって頚椎の椎間板が潰れて膨隆することで頚椎の隙間が狭くなったり、骨が出っ張ったり(骨棘)、骨の並びがデコボコすることで周りの筋肉や靭帯が緊張して、神経を圧迫・刺激し、手にしびれ・痛みを生じさせたものです。また、デスクワークやPC作業で下を見ることが多い人がなることがあります。

効果:首の骨の変形は鍼灸でどうすることもできませんが、神経を圧迫・刺激している筋肉の緊張をほぐすことで上肢のしびれ・痛みを取り除くことが可能です。だいたい、5回くらいで良くなります。

代替性:首の筋肉をほぐすことができれば、他の手段もあるのではないでしょうか。

鍼の響き:そこまで痛くないと思います。1~3番の太さの鍼を使うことが多いです。

総評:他の治療に比べて早く治る方ではないでしょうか。仕事等で常に首に負担がかかっている方がなりやすいので、首や肩のコリの予防として首や肩甲骨のストレッチなど重要です。また、痛みが強いときは頸椎の伸展動作、首に力がかかること(重量物の持ち上げなど)をすると悪化しますので、ご注意ください。


頚部椎間板ヘルニア

効果
代替性
鍼の響き
総評

頚部椎間板ヘルニアの症状は、頚部の椎間板が後方や側方に脱出し、首の神経の根本(時には脊髄)を圧迫することで上肢のしびれ・痛み(時には脊髄症状)を生じさせたものですが、ただ単にヘルニアによる機械的圧迫だけではなく、その局所に炎症症状が伴うことで初めて痛みやしびれが生じると言われています。ブロック注射をしたり、日が経つと症状が楽になるのはそのためです。したがって、鍼や灸が効いたとさせる椎間板ヘルニアは”真性の椎間板ヘルニアではない”と考えています。

効果:ヘルニア付近の筋緊張を取り除くことで周囲の血液循環を改善することで刺激されている神経をリリースさせます。MRIで頚椎ヘルニアと診断されているが、実際は頚椎症性神経根症などの場合は頚部のコリをほぐすことで症状が改善されます。

頚椎ヘルニアで神経刺激症状が強く出ている場合(痛くて痛くてたまらない状態)は強い炎症が起きているので、鍼は思ったより効きません。安静にしてもズキズキ痛むようでしたら、鎮痛剤の服用やシップをして炎症が落ち着くまで様子をみましょう。落ち着いてきて、中程度~弱い痛みが継続するようなら鍼灸の出番です!

代替性:よく分かりません。

鍼の響き:そこまで痛くないと思います。1~3番の太さの鍼を使うことが多いです。     

総評:頚部椎間板ヘルニアかどうかはMRIなどの診断機器でしか分からないため、鍼灸の現場だけでは判断がつかないときもあります。症状が酷いときや治りが悪いときには医療機関で精査することをお勧めします。また、無症候性の椎間板ヘルニアもしばしばみられるため、画像診断で確認された椎間板ヘルニアが現症状の直接の原因ではなく、筋肉のコリや血流障害が原因の場合があるようです。椎間板ヘルニアと診断されたが、保存療法が極めて効いた場合がそれにあたるかもしれません。なので、やってみないと分からないし、2,3回治療しても良くならないようならば効かないと判断しても良いと思います。


胸郭出口症候群

効果
代替性
鍼の響き
総評

頚椎から出た神経が腕に向かう途中の首の側面~鎖骨~脇付近の筋肉が緊張して神経・血管を圧迫することで腕がしびれるものをいいます。腕のしびれ以外にも肩・肩甲骨付近のコリ・痛みがあるもの。自律神経症状が伴うものなどがあります。

交通事故やスポーツ障害、腕や首を酷使する職種の人にみられる他、首の長い、なで肩の女性はなりやすいと言われています。

最近の研究では肘部管症候群や手根管症候群の合併が30~40%でみられると報告されています。

効果:首や鎖骨回り、背中の筋肉緊張をほぐせば良くなります。

代替性:原因筋にアプローチできれば良くなるのではないでしょうか

鍼の響き:そこまで痛くないと思います。1~3番の太さの鍼を使うことが多いです。

総評:鍼でも整体でもマッサージでも神経を圧迫する筋肉の緊張がほぐれれば良くなりますが、鍼の方が早いかもしれません。


肘部菅症候群

小指と薬指にしびれが出ます。私はあまり遭遇したことがありません。

⑤手根管症候群

手作業が多い人がなります。夜や朝方にしびれや重苦しさが出やすいです。鍼治療で前腕の屈筋・伸筋群を緩めると良くなることが多いです。

肘の痛み(テニス肘・上腕骨外側上顆炎)
効果
代替性
鍼の響き
QOLとコスパ

一過性の筋肉痛だと思ったらなかなか治らなくて、実はテニス肘だったということがあります。
テニス肘は筋肉痛のようには治りませんから。
肘周囲の硬く凝り固まったコリをほぐすと治ります。

腱鞘炎(ド・ケルバン症、ばね指)
効果
代替性
鍼の響き
QOLとコスパ

腱鞘炎は鍼でも良くなりますが、コスパを考えると、注射の上手な医師にかかる方が良いかもしれません。
注射を打たれるのが嫌か、それでも治らなかった場合に鍼治療したほうが良いかもしれません。
関連するものとして関節リウマチ、母指CM関節症(術後含む)やヘバーデン結節などは、関節(骨)の問題なので鍼灸で治りませんし、当院の治療ではコスパが合いませんので、止めておいた方が良いです。